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花ごころ 平成20年度秋号

テーマ:ユリ

「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」立ち居振る舞いのしっかりした麗人を表現したものでしょうが、この時のユリの花はどんな種類を想像したのでしょうか。
ユリは、原種として約100種類、日本には15種類の自生がありますが、観賞価値の高い種類が多く、現代の改良品種の多くに日本種のDNAが組み込まれています。
例えばヤマユリ、野生種であれだけの大輪を咲かせる草が他にあるでしょうか。あの花に色をつけてみたい、とはいっても、種類が違えば原則として交雑はしない。そこで下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる、間違いを期待してユリの交雑には国の内外を問わず色々な工夫が試みられてきました。栽培の工夫によって開花期を合わせる、あるいは花粉を貯蔵する、別種の花粉だけでは受け付けないので、同種の花粉と交ぜてごまかすなど、また、メシベ(花柱)が長いので花粉管が卵子にとどくまでに息切れしてしまうだろうと、花柱にホルモン剤や栄養剤を塗ったり、更には花柱を切り詰めてから受粉をするなどです。
運よくサヤが膨らんで僅かのタネができても、胚だけで、発芽までの栄養(胚乳)をもたないことも多く、実る前に取り出して人工培養することになります。だから現在の華麗なる品種はタネを結ばないのが多いのです。栽培はむずかしい方。茎から出る根が大切なのでやや深植えに、根元に日光を当てない、不成績は環境を替えてみるなど。