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花ごころ 平成22年夏号

テーマ:まんじゅしゃげ

植物としての和名はヒガンバナ、中国から渡来したという説と日本が大陸と地続きだったころから自生していたという説があります。種が全く実らない球根植物なのに、全国いたるところに自生するという不思議な花です。つまり、球根に含む毒性のため、動物による移動は考えにくく、洪水などによる土砂の移動以外、すべて人によってしか自生地を替えることができないのに、栽培ではなく野生というのが特異です。自生地が墓地や田畑の畦畔、山裾など人がかかわっていることは確かで、地方名が400もあるという調査もあるほど高い関心を持たれながら、これまで、なんとなく横目で観賞しながら通り過ぎるような差別待遇はどこからくるのでしょうか。
今の草花は世界中から導入され、多くの種類に赤がありますが、あの赤はほとんどが人間によって作り出されたもので、自然界での赤花の種類は5%にも満たないといわれます。花粉の媒介昆虫には、波長の長い赤系の色は見えない種類が多く、黄や青、紫、そして人には見えない紫外線の一部まで見えるらしいのです。つまり、植物にとって赤花は無駄であり、秋の七草が日本の自然界の色で、そこに葉も見えない土の中から、いきなり花茎だけを出して咲く見たこともない濃艶な色の花は、魅力的ながら異様、あの世からの贈りものだったのではないでしょうか。